50代の人脈作りは「ギブ&テイク」を捨てろ ― 本当に機能する関係性の築き方

50代の人脈作りは「ギブ&テイク」を捨てろ ― 本当に機能する関係性の築き方
こんにちは、ライフデザインパートナーHMです。
数年前に転職活動をしたとき、私は愕然としました。20年間蓄積してきた「人脈」の大半が、実際には何の役にも立たなかったのです。
転職エージェントに登録し、LinkedInを更新し、過去の名刺を整理して連絡を取ってみました。しかし、返事が来たのは50人中わずか8人。そのうち具体的な話に繋がったのは2人だけでした。
「あれだけ名刺交換したのに」「いつも『何かあったら声をかけて』と言われていたのに」
私は自分の人脈作りが根本的に間違っていたことを痛感しました。あれから2年、今では本当に信頼できる関係性を20名ほど築くことができています。その経験から見えてきた、50代の人脈作りの現実をお話しします。
私が犯した3つの大きな間違い
転職活動での失敗を振り返って、自分がやっていた人脈作りの問題点が明確になりました。
まず、「何かお役に立てることがあれば、お声がけください」という決まり文句。これを毎回言っていたのですが、実際に声をかけられたことはほとんどありませんでした。後で知ったのですが、相手からすると「具体的に何ができるのか分からない」「結局は社交辞令だろう」と思われていたようです。
次に、異業種交流会での名刺交換。毎月のように参加し、毎回30〜40枚の名刺を集めていました。しかし、翌週に連絡を取っても返事が来るのは10%程度。そのうち実際に会うのは1〜2人で、継続的な関係に発展するのは皆無でした。
そして、LinkedInでの情報発信。「マネジメントの本質とは」「チームワークの重要性」といった投稿を毎週していましたが、いいねは同僚からばかり。実際に新しいつながりが生まれることはありませんでした。
これらの経験から分かったのは、50代の人脈作りは20代・30代とは全く異なるアプローチが必要だということです。
転職成功のカギとなった「共同作業」による関係構築
失敗から学んだ後、私は人脈作りのアプローチを根本的に変えました。
最初のきっかけは、地域のIT勉強会でした。プレゼンターとして参加するのではなく、運営スタッフとして会場設営や受付を手伝ったのです。毎月第3土曜日の朝9時から準備作業をする中で、自然と他のスタッフと話す機会が増えました。
そこで知り合った田辺さん(51歳、システム開発会社経営)とは、会場の机を一緒に運びながら仕事の話をしました。スライドの準備をしながら、お互いの転職体験を語り合いました。名刺交換会のような表面的な会話ではなく、実際に何かを一緒にやりながらの自然な会話だったのです。
田辺さんは後日、「あの時の話を覚えてる?システムの要件定義の件で、ちょっと相談があるんだ」と連絡をくれました。そこから始まった関係は、現在も続いています。彼とは年に4〜5回は仕事の相談をし合い、お互いの会社の案件を紹介することもあります。
この経験から分かったのは、50代の人脈は「何かをもらう」「何かをあげる」という取引的な関係ではなく、「同じ時間を共有する」ことで生まれるということでした。
人を紹介する側に回って見えた新しい可能性
転職活動中に気づいたもう一つの重要なことは、「紹介してもらう」より「紹介する」方が関係が深まるということでした。
前職で培った業界知識と人脈を活かして、IT勉強会で知り合った若手エンジニアの武田さん(29歳)を、人手不足で困っていた小林さん(56歳、製造業IT部門)に紹介しました。結果的に武田さんは小林さんの会社でフリーランスとして働くことになり、双方から感謝されました。
この件で面白かったのは、私自身が一番得をしたことです。武田さんからは最新の技術動向を教えてもらえるようになり、小林さんからは製造業のDX事例を詳しく聞けるようになりました。また、両者とも私を「信頼できる人」として他の人に紹介してくれるようになったのです。
現在、私は月に1〜2件のペースで人や情報の紹介をしています。求人情報、技術コンサルタント、業務システムの導入事例など。こうした活動を続けた結果、逆に私自身も多くの相談や案件の話をいただけるようになりました。
50代になると、豊富な経験と幅広い人脈を持っています。これを「自分のため」に使うのではなく、「他の人のため」に使うことで、結果的に自分の価値も高まっていくのです。
関係性を維持する具体的な方法と結果
人脈作りで最も難しいのは、実は「維持」です。新しい人と知り合うのは簡単ですが、その関係を長期間続けるのは本当に大変です。
私が実践している方法は、「年始の挨拶」と「誕生日メッセージ」の習慣化です。毎年1月に、前年にお世話になった方約30名に手書きの年賀状を送ります。また、LinkedInや名刺の情報から誕生日が分かる方には、その都度お祝いメッセージを送っています。
この習慣を始めて3年になりますが、効果は予想以上でした。昨年は年賀状の返事から5件の仕事の相談をいただき、そのうち2件は実際のプロジェクトに発展しました。誕生日メッセージでは、「覚えていてくれてありがとう」という返事と一緒に近況報告をもらうことが多く、その中から新しい人脈に繋がることもあります。
重要なのは、「下心を持たない」ことです。仕事に繋がればラッキーですが、そうでなくても相手の近況を知れるだけで十分価値があると考えています。実際、直接的な仕事に繋がらなくても、「○○の分野に詳しい人を知りませんか?」という相談を受けたときに、適切な人を紹介できることで信頼関係が深まっています。
50代だからこそできる人脈作りの優位性
50代の人脈作りには、若い世代にはない大きな優位性があります。それは「時間の使い方が自由になる」ことと「損得を考えなくても良い余裕がある」ことです。
20代・30代の頃は、人脈作りも「投資」として考えがちでした。「この人と知り合っておけば将来役に立つかも」「あの業界の人とつながりを作っておこう」といった具合です。しかし50代になると、そうした計算よりも「この人と話していると楽しい」「お互いに刺激を与え合える」といった純粋な関心で人と接することができます。
また、役職や経験を重ねたことで、若い人に教えられることも増えました。私は現在、月に1回程度、若手エンジニア向けの勉強会で講師を務めています。参加者の多くは20代・30代ですが、彼らからも最新の技術動向や新しい働き方について多くを学んでいます。こうした「相互学習」の関係は、一方的な上下関係よりもずっと強固で持続的です。
2年間の実践から見えた人脈の本質
転職活動の失敗から学び、人脈作りのアプローチを変えて2年が経ちました。現在、本当に信頼できる関係と言える人が約20名います。これは以前の「知り合い」100名よりもはるかに価値が高いと感じています。
最も大きな変化は、「困ったときに相談できる人がいる」安心感です。技術的な問題、経営判断、キャリアの悩み。それぞれの分野で信頼できる相談相手がいることで、一人で抱え込むことが少なくなりました。
同時に、私自身も他の人から相談を受ける機会が増えました。「○○の件で困っているんだけど、何かアドバイスはある?」「この分野に詳しい人を知らない?」といった相談です。こうした相談に応えることで、自分の価値を再確認できるとともに、新しい学びの機会も得られています。
50代の人脈作りは確かに若い頃とは違います。しかし、この年齢だからこそできる深く持続的な関係性があることを、身をもって実感しています。急がず、焦らず、自然体で関係を育てていく。これが50代の人脈作りの本質だと思います。
※本記事に記載されている個人の体験談、人名、会社名、具体的な交流内容等は説明目的のフィクション含みます。人脈作りに関する判断は専門家にご相談ください。