【連載・第2回】運命を分けた小さな出会い ── フリーランス配送という選択 ──

【連載・第2回】運命を分けた小さな出会い ── フリーランス配送という選択 ──
何気ない一歩が、未来を変えることもある
年が明けても、桐谷誠司の生活は劇的には変わらなかった。
相変わらずの短期バイト、細切れの派遣業務。
未来の設計図どころか、明日の仕事すら見通せない日々だった。
そんなある日、コンビニの掲示板にふと目を留めた。
「軽貨物配送ドライバー募集 未経験可 年齢不問」
今までなら、素通りしていたかもしれない。
だが、年金定期便を見たあの日から、桐谷の中で何かが微かに変わっていた。
── 稼がなきゃ。
── 自分で、何とかしなきゃ。
掲示板に貼られた紙を、震える手でそっと剥がした。
できるのか? いや、やるしかない
「配送か……」
桐谷は、バイト帰りの帰路、独りごちた。
運転免許はある。車の運転も好きだ。
だが、体力には不安がある。そもそも、個人事業主だなんて、桐谷には縁遠い世界だった。
心配は尽きなかったが、
不思議と「無理だ」とは思わなかった。
背中を押したのは、
あの年金見込額、52,000円という無慈悲な現実だった。
小さな契約、初めての「個人事業主」
後日、指定された説明会場に出向いた。
中年男性が数人、同じように集まっていた。
説明は淡々としていた。
- 軽バンを使い、荷物を配達するだけ
- 一件いくら、件数報酬
- 個人事業主契約(雇用ではない)
不安もあったが、桐谷はその場で登録を決めた。
「これでいいんだろうか……」
そう思いながらも、契約書にサインした。
これが、桐谷誠司が"フリーランス"として歩き出した瞬間だった。
初仕事、震えるハンドル
初日の朝、桐谷は久々に早起きして配送センターに向かった。
支給された伝票と地図を握りしめ、軽バンのハンドルを強く握る。
最初の配達先。
インターホンを押す手が震えた。
だが、荷物を受け取った客の「ありがとう」という一言が、
桐谷の心にじんわりと染みた。
── 仕事って、こういうものだったっけ。
久しぶりに味わう、誰かの役に立ったという感覚。
走りながら、桐谷は小さく笑った。
小さな積み重ねが、大きな違いを生む
数日間の仕事を終えた後、
初めての報酬が振り込まれた。
金額は、決して多くなかった。
それでも、自分の力で稼いだ金だった。
桐谷は、通帳の数字を見つめながら思った。
「これが、"立て直す"ってことかもしれないな。」
すぐに生活が豊かになるわけじゃない。
だが、方向は間違っていない気がした。
そして、次の一手へ
配送を続けながら、桐谷はある壁に直面する。
── 税金の問題だ。
報酬から自動で税金が引かれるわけではない。
「確定申告」「経費計上」「控除」──初めて聞く言葉のオンパレードだった。
そこで紹介されたのが、小さな町の税理士事務所だった。
そこで桐谷は、「ideco」という言葉に出会う。
未来を守るための積立。
そして、それが節税にもなる。
次回、桐谷誠司、idecoとの運命の出会い──。