【連載・第3回】未来を守る選択 ── idecoと付加年金との出会い ──

【連載・第3回】未来を守る選択 ── idecoと付加年金との出会い ──
確定申告、そして「知らないリスク」との遭遇
配送ドライバーとして働き始めて数ヶ月。
ようやく生活が軌道に乗りかけた桐谷誠司に、現実が押し寄せた。
「確定申告? 税金は自分で?」
報酬から税金が引かれていない──当然のことながら、それはつまり、
自分で納税手続きをしなければならないということだった。
桐谷は頭を抱えた。
控除、経費、所得税、住民税──聞き慣れない単語が次々と降りかかってくる。
途方に暮れていたとき、配送仲間に紹介されたのが、
駅近くの小さな税理士事務所だった。
ideco──未来を守るための武器
税理士の椅子に座ると、初老の担当者がにこやかに言った。
「桐谷さん、所得があるなら、"控除"をうまく使った方がいいですよ。」
その中で、特に力強く勧められたのが「ideco(個人型確定拠出年金)」だった。
「ideco(イデコ)」は、自分で積み立て、自分で運用し、老後資金を作るための制度です。
掛金は全額が所得控除対象となり、運用益も非課税、受取時にも優遇措置があります。
フリーランス(個人事業主)の場合、掛金上限は月68,000円に設定されています。
idecoで運用した資産の利益(運用益)には本来20.315%の税金がかかりますが、
ideco口座内での運用益については非課税となり、再投資されます。
これにより、長期積立効果がさらに高まる仕組みになっています。
「まだ50代だから間に合います。
しかも、最大の67,000円掛ければ、かなり節税になりますよ。」
桐谷は戸惑った。
──そんなに毎月積み立てられるのか?
──でも、やらなければ、老後は絶望的だ。
頭の中で、以前見たあの年金定期便の「52,000円」という数字がよぎった。
桐谷は、ゆっくりと決意した。
「……やります。最大額で。」
付加年金──国民年金を底上げする
さらに税理士は、もうひとつ提案をしてきた。
「付加年金も、やっておきましょう。」
「付加年金」は、国民年金に月額400円を上乗せして納付する制度です。
将来の年金受取額が、200円×納付月数だけ増える仕組みになっています。
コストパフォーマンスが非常に高く、特にフリーランスにとっては効果的な制度です。
idecoだけではカバーしきれない基礎年金部分を、少しでも手厚くする方法だった。
「400円なら、できるかもしれない。」
迷いはなかった。
今、未来に種をまかなければ、
10年後、どんな現実が待っているかはもう分かっている。
桐谷は、idecoと付加年金の申込み手続きを、その場で終えた。
未来は、まだ選べる
手続きが終わった帰り道。
桐谷は、薄曇りの空を見上げた。
何も保証されていない。
それでも、自分で選び、自分で動いたことだけは、
たしかに未来へつながる一歩だった。
毎月67,000円。
決して小さな負担ではない。
だが、それは**「未来を守るために払う保険料」**だと思うことにした。
配送の仕事を続けながら、地道に積み立てていこう。
少しずつでもいい。
昨日とは違う自分でいよう。
次回、桐谷はさらなる資産防衛策、「小規模企業共済」と出会う──。