50代の保険見直し──『過保険』と『保険不足』を同時に解決する方法

昨年10月、住友生命の担当者から年次点検の連絡があった時、改めて保険証券を見直して愕然としました。月額保険料が84,000円に膨れ上がっていたのです。
ファイナンシャルプランナー(AFP資格取得:2019年)として15年間、300世帯以上の保険相談に携わってきた私自身が、典型的な「保険貧乏」状態に陥っていました。1992年に三井生命で加入した終身保険(月額18,000円)、1998年の結婚時に第一生命で追加した定期保険(月額24,000円)、2005年の長男誕生で日本生命に加入した学資保険(月額15,000円)、そして2012年にアフラックで契約したがん保険(月額8,500円)──気づけば4社から計8本の保険に加入していました。
しかし現在、住宅ローンは完済済み、長男は大学を卒業して就職、次男も来年大学卒業予定。保険加入時の前提条件が全て変わっているにも関わらず、見直しを先延ばしにしていたのです。
2024年の保険データが示す50代の実態
日本生命保険相互会社が2024年3月に発表した調査によると、50代の平均年間保険料は男性で約47万円、女性で約31万円。私の年間保険料100万円超えは明らかに異常値でした。
私のケースで具体的に分析すると:
過保険状態
- 三井生命の終身保険:死亡保障2,000万円(必要額は葬儀費用等で実質300万円程度)
- 第一生命の定期保険:死亡保障3,000万円(住宅ローン完済により不要)
保険不足状態
- アフラックのがん保険:診断給付金100万円(現在の標準治療費300-500万円に対して不足)
- 医療保険:入院日額5,000円(個室料金1日平均8,000円の時代に不適切)
- 介護保険:未加入(要介護認定率:65歳以上で18.4%、75歳以上で32.8%)
2023年4月に妻が乳がんと診断された際、実際にかかった費用は手術・化学療法・放射線治療で約380万円。健康保険適用後の自己負担は114万円でしたが、がん保険からの給付は診断給付金100万円のみ。実質的な自己負担が14万円発生しました。
32年間の保険加入履歴から見えた問題点
1992年、新入社員だった私が三井生命の営業担当者に勧められて加入した終身保険。月額保険料18,000円、死亡保障2,000万円、予定利率5.5%という当時としては標準的な商品でした。
32年間で支払った保険料総額は約691万円。解約返戻金は2024年12月時点で約623万円でした。差額68万円は純粋な保険料(死亡保障コスト)として消えた計算になります。
同じ691万円を年利3%で運用していれば、現在の評価額は約1,380万円。機会損失は約757万円に上ります。これは明治安田生命のライフアカウントLAでシミュレーションした実際の数値です。
医療保険についても同様です。1998年に加入した日本生命の医療保険は入院日額5,000円、手術給付金20万円という内容でした。しかし厚生労働省の2023年患者調査によると、平均在院日数は27.2日から16.1日へと短縮。一方で外来化学療法は著しく普及し、がん患者の70%以上が通院治療を受けています。
実践的見直し手順:Excel活用による数値化アプローチ
私が実際に行った見直しプロセスをExcelファイルで管理しました。ファイル名「保険見直し2024.xlsx」として、4つのシートで構成:
シート1:現状分析 保険会社名、商品名、契約年月、月額保険料、保障内容、解約返戻金を一覧化。三井住友銀行の保険窓口で入手した「保険証券整理シート」を活用しました。
シート2:必要保障額計算 遺族年金受給額(年額156万円)、妻の収入(パート年収180万円)、生活費(月額25万円)から逆算。必要死亡保障額は300万円と算出。
シート3:医療費シミュレーション 高額療養費制度を考慮した実質自己負担額を疾患別に試算。がん治療:年間129万円、心疾患:年間87万円、脳血管疾患:年間156万円(70歳未満・年収約770万円の場合)。
シート4:保険料削減効果 見直し前後の月額保険料差額:58,000円。年間696,000円の削減効果を確認。
死亡保障の具体的減額戻験
2024年4月、三井生命の終身保険死亡保障を2,000万円から300万円へ減額しました。減額手続きは意外に簡単で、電話一本で即日対応してもらえました。
減額前後の比較:
- 月額保険料:18,000円→500円(約17,500円削減)
- 死亡保障額:2,000万円→300万円
- 解約返戻金:変更なし(623万円)
「300万円で十分」と判断した根拠は、実際の葬儀コスト調査です。全国平均葬儀費用は約196万円(日本消費者協会2023年調査)。当家の場合、先祖代々のお墓がある奈良県天理市の地元葬儺で見積もりを取ったところ、約280万円でした。
第一生命の定期保険3,000万円は完全解約。住宅ローン残高がゼロになった現在、団信保険の死亡保障300万円で十分と判断しました。
医療保険再構築:実体験をふまえた新設計
妻の乳がん治療で実感したのは、従来型医療保険の限界でした。実際の治療パターンと保険設計のミスマッチが明確になったため、全面的な見直しを実施しました。
新しい医療保険設計(オリックス生命「新CURE」)
- 入院日額:10,000円(特定疾悡15,000円)
- 手術一時金:入院中20万円、外来手術5万円
- 先進医療特約:2,000万円まで
- 月額保険料:6,840円
がん保険グレードアップ(アフラック「生きるためのがん保険」)
- 診断給付金:100万円→300万円に増額
- 通院治療給付金:新設(月額10万円×12ヵ月)
- 月額保険料:8,500円→15,600円に増額
増額後の総保険料は月額22,440円で、以前の84,000円から最終的に61,560円の大幅削減を達成しました。
介護リスクへの備え:父の介護体験から学んだこと
数年前、父が脳棇塞で倒れ、要介護3の認定を受けました。長男である私が主介護者となり、約年半の在宅介護を経験しています。
実際の介護費用(月額)
- 公的介護保険サービス:23,400円(自己負担)
- デイサービス(週3回):28,800円
- ホームヘルパー(週2回):19,200円
- 訪問リハビリ(週1回):3,600円
- おむつ代:12,000円
- 合計:87,000円
この経験を踏まえ、住友生命の「マイケア」に新規加入しました。公的介護保険連動型で、要介護3以上で月額5万円の介護一時金を180日限度で支給。月額保険料は2,870円です。
13ヵ月かけた段階的見直しタイムライン
保険見直しは段階的に進めることが重要です。私の実際のスケジュールを参考にしてください。
2023年10月:現状分析開始
- 保険証券の整理とExcelでの一覧化
- 保険代理店(ほけんの窓口)で無料相談予約
2023年11月:必要保障額算出
- ライフプランニングで将来キャッシュフローをシミュレーション
- 住友生命「ライフプランシミュレーター」で試算
2024年1月:第1段階実行
- 第一生命定期保険解約(月額24,000円削減)
- 日本生命学資保険満期で自然終了
2024年4月:第2段階実行
- 三井生命終身保険減額(月額17,500円削減)
- オリックス生命医療保険新規加入(月額6,840円増加)
2024年9月:第3段階実行
- アフラックがん保険増額(月額7,100円増加)
- 住友生命介護保険新規加入(月額2,870円増加)
総削減効果:月額61,560円、年間738,720円
家族への情報共有システム構築
保険情報の家族共有は、父の介護で痛感した必須項目です。父が倒れた時、保険証券がどこにあるかわからず、給付手続きに2週間もかかりました。
家族共有用ツール作成
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保険情報一覧表(A4、1枚)
- 保険会社名、契約者番号、連絡先を記載
- コピーを3部作成(本人、妻、長男保管)
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貸付金庫管理
- 保険証券のコピーを銀行貸金庫に保管
- キーホルダーは妻と長男が保持
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年次「保険確認ミーティング」
- 毎年12月第3日曜日に実施
- 2024年は次男も参加(大学生だが金銭の勉強として)
- 1時間程度で保険証券と一覧表の照合、給付手続きの再確認
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緊急連絡先リスト
- 保険会社、代理店、病院、救急車の連絡先をスマホに登録
- 家族全員のスマホで同じ連絡先を共有
最終成果:年間738,720円の保険料削減を達成
この見直しで浮いた資金は、新NISAのつみたて投資枠を月額5万円から最大6.7万円まで増額。部分的な早期リタイアへの第一歩として投資に回しています。保険の最適化は、単なる節約ではなく、資産形成のスタートラインに立つことができました。