50代の借金整理術──複数の債務を『見える化』して一気に解決する方法

こんにちは、ライフデザインパートナーHMです。
2021年の秋、私は深刻な多重債務状態にありました。住宅ローン残高1,480万円、教育ローン280万円、車ローン120万円、カードローン85万円、クレジットカードリボ払い45万円。毎月の返済総額は18万2,000円に達していました。
当時の手取り月収32万円の半分以上が借金返済に消えていく状況でした。家計簿を見返すと、食費を削り、娯楽費をゼロにしても、残り13万8,000円で生活することの苦しさが数字で見えてきます。
金融機関での20年間の勤務経験を活かして債務整理に取り組み、現在は住宅ローンを除く借金をすべて完済しています。同じ悩みを抱える50代の方に、私の実体験に基づく現実的な解決策をお伝えします。
私の多重債務はこうして始まった
金融機関で融資担当をしていた私が、なぜ多重債務に陥ったのか。具体的な経緯をお話しします。
発端は2019年、長男の大学受験でした。私立大学の入学金90万円が必要だったのですが、同時期に車検で25万円、父の入院で医療費が15万円と重なりました。定期預金を解約すれば足りましたが、「子供の教育費で老後資金を減らしたくない」という思いから、教育ローンを利用したのです。
翌年、コロナ禍で私の勤務先の業績が悪化し、ボーナスが3割カットされました。予定していた繰上返済ができなくなり、生活費の不足分をカードローンで補うようになりました。「一時的な措置」のつもりが、気がつくと常態化していたのです。
最も大きな判断ミスは、複数の借入先を使い分けていたことです。「分散すれば管理しやすい」と考えていましたが、実際には全体像が見えなくなり、借金が雪だるま式に増えていきました。
金融のプロが気づいた「見える化」の威力
融資審査をしていた私でも、自分の借金については感覚的にしか把握していませんでした。転機となったのは、妻から「毎月いくら返済してるの?」と聞かれたときです。答えられなかった自分に愕然としました。
翌日、すべての借入を一覧表にまとめました。使ったのは、職場で使っていた融資管理システムと同じフォーマットです。
【2021年10月時点の借入状況】
- 住宅ローン(三菱UFJ銀行):残高1,480万円、金利0.525%、月返済8万7,000円
- 教育ローン(国民生活金融公庫):残高280万円、金利1.7%、月返済3万5,000円
- 車ローン(ディーラーローン):残高120万円、金利3.9%、月返済2万8,000円
- カードローン(みずほ銀行):残高85万円、金利14.0%、月返済2万5,000円
- クレジットカードリボ:残高45万円、金利18.0%、月返済7,000円
一覧にした瞬間、問題が明確になりました。総額2,010万円の借金のうち、高金利の130万円(カードローン+リボ払い)に月3万2,000円も払っていたのです。これは住宅ローン金利の実に30倍以上でした。
雪だるま式利息を止める「逆算返済戦略」
融資担当として数百件の案件を見てきた経験から、最も効果的な返済順序を導き出しました。金利18%のリボ払いを放置すると、45万円が5年で約110万円になってしまいます。
私が実践したのは「逆算返済戦略」です。まず各借金の利息負担を月単位で計算しました。
【月間利息負担(2021年10月)】
- リボ払い45万円×18%÷12=6,750円
- カードローン85万円×14%÷12=9,917円
- 車ローン120万円×3.9%÷12=3,900円
- 教育ローン280万円×1.7%÷12=3,967円
- 住宅ローン1,480万円×0.525%÷12=6,475円
驚いたことに、45万円のリボ払いが1,480万円の住宅ローンとほぼ同じ利息を生んでいました。
家計の見直しで月5万円を捻出し、この金額をすべて高金利借金の返済に集中投入しました。リボ払いは3ヶ月で完済、カードローンは6ヶ月で完済。これだけで月1万6,667円の利息負担がゼロになりました。
おまとめローンの罠と正しい活用法
金融機関勤務の経験から、おまとめローンには大きな落とし穴があることを知っていました。多くの人が月返済額の軽減に注目しますが、総返済額が増える可能性があるのです。
私の場合、カードローン85万円と車ローン120万円の計205万円を、勤務先の職員向けローン(金利2.5%)でまとめることを検討しました。
【おまとめローンシミュレーション結果】
- 現状維持の場合:総返済額218万円、完済まで3年4ヶ月
- おまとめローン(5年返済):総返済額221万円、月返済額3万7,000円
- おまとめローン(3年返済):総返済額213万円、月返済額5万9,000円
月返済額を下げると総返済額が増えることが明確になりました。そこで、おまとめはせず、高金利借金への集中返済を続けることにしたのです。
ただし、返済管理が複雑すぎる場合は、多少の利息増加を受け入れてでもおまとめを選ぶべきケースもあります。私が相談を受けた50代の方で、8社から借入していた方は、おまとめローンで返済管理が格段に楽になりました。
妻の協力で見つけた月5万円の削減ポイント
最も辛かったのは、妻に借金の全容を打ち明ける時でした。2021年11月のある夜、作成した借金一覧表を見せながら状況を説明しました。
妻の第一声は「なぜもっと早く相談してくれなかったの?」でした。責められると思っていましたが、実際には「一緒に解決しよう」と言ってくれました。
妻の提案で、過去1年分の家計簿を詳細に分析しました。その結果、驚くべき無駄遣いが発覚しました。
【月5万円削減の内訳】
- 外食費:月4万2,000円→1万5,000円(2万7,000円削減)
- 通信費:携帯3台で月2万8,000円→格安SIMで9,000円(1万9,000円削減)
- 生命保険:月4万5,000円見直しで1万5,000円削減
- その他:雑費1万5,000円削減
特に保険の見直しは大きな効果がありました。妻の協力で、必要保障額を計算し直し、掛け捨て型に変更することで大幅な削減を実現しました。
大学生の長男にも状況を説明し、アルバイトを増やして教科書代は自分で負担してもらうことになりました。家族全員で取り組むことで、借金完済への道筋が見えてきたのです。
副業収入を返済に充てる
50代になると、本業の収入を大幅に増やすのは難しいかもしれません。
しかし、副業で得た収入を借金返済に充てることで、返済期間を短縮することができます。
私の場合、週末にコンサルティングの仕事を始めました。月々3万円程度の副業収入でしたが、これをすべて借金返済に充てることで、完済までの期間を2年短縮できました。
副業といっても、大げさなものである必要はありません。不用品の販売、スキルを活かした単発の仕事、ポイ活など、小さな収入でも積み重ねれば効果があります。
専門家に相談することも選択肢
借金の額が大きくて自力での解決が困難な場合は、専門家に相談することも検討してください。
弁護士や司法書士による債務整理、ファイナンシャルプランナーによる家計相談、自治体の無料相談窓口など、様々な相談先があります。
特に、返済が滞りそうな状況になった場合は、早めに専門家に相談することが重要です。放置していても問題は解決しませんし、時間が経つほど選択肢が少なくなってしまいます。
借金完済後の家計管理
借金を完済できたら、今度は同じ問題を繰り返さないための仕組み作りが大切です。
まず、緊急時の資金として、生活費の3ヶ月分程度を貯蓄しておくこと。急な出費があっても、借金に頼らずに済むようになります。
また、大きな支出が予想される場合は、事前に計画を立てて準備すること。子どもの進学費用、車の買い替え、家のリフォームなど、ある程度予測できる支出については、早めに貯蓄を始めます。
クレジットカードの使い方も見直しました。リボ払いは絶対に使わない、毎月の利用額に上限を設ける、支出をその都度記録するなど、ルールを決めています。
50代の借金問題は、決して珍しいことではありません。大切なのは、現状を正確に把握して、優先順位をつけて解決していくことです。
一人で悩まず、家族や専門家と相談しながら、一歩ずつ前進していけば、必ず解決できるはずです。
※本記事に記載されている個人の体験談、借入金額、具体的な返済方法等は説明目的のフィクション含みます。借金整理に関する判断は専門家にご相談ください。