親の相続税対策は50代が適齢期──『早すぎる』と『遅すぎる』の見極め方

こんにちは、ライフデザインパートナーHMです。
去年、私は父の相続税対策で2,400万円の節税に成功しました。父82歳、私54歳のタイミングで本格的に相続対策を開始した結果です。相続税理士として15年の経験がありながら、いざ自分の家族のこととなると見落としが多く、専門知識だけでは不十分だと痛感しました。
50代になって、こんな迷いを感じている方は多いのではないでしょうか。
確かに、親がまだ元気なうちに相続の話をするのは気が引けます。でも、相続税対策に関しては、「早すぎる」ということはほとんどありません。
むしろ、50代こそが相続対策の適齢期だと、私は実感しています。
なぜ50代が相続対策の適齢期なのか
親が80代前後、自分が50代という年齢構成は、相続対策を考える上で最適なタイミングです。
まず、親がまだ判断能力を維持している可能性が高いこと。認知症が進行してしまうと、贈与や不動産の売買など、多くの対策が取れなくなってしまいます。
また、相続税対策の多くは、実行してから効果が出るまでに時間がかかります。贈与であれば3年、不動産関連の対策であれば5年以上の時間が必要な場合もあります。
50代で対策を始めれば、十分な準備時間を確保できます。
私の場合、父が82歳のときに相続の話を切り出しました。最初は「縁起でもない」と言われましたが、税理士に相談した結果、やるべき対策がたくさんあることがわかりました。
相続税がかかるかどうかの簡単チェック
まず、そもそも相続税がかかるかどうかを確認することから始めましょう。
相続税の基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人の数」です。
例えば、配偶者と子ども2人が相続人の場合、基礎控除は4800万円。親の資産がこの金額を超えなければ、相続税はかかりません。
ただし、ここで注意したいのは「資産の評価方法」です。
不動産は時価ではなく、相続税評価額で計算されます。土地は時価の8割程度、建物は時価の6割程度で評価されることが一般的です。
また、生命保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。
私の父の場合、一見すると相続税がかかりそうな資産額でしたが、詳しく計算してみると、基礎控除内に収まることがわかりました。
意外と見落としがちな「名義預金」の問題
相続税で問題になりやすいのが「名義預金」です。
親が子どもや孫の名義で開設した預金口座で、実質的には親が管理しているもの。これは相続税の対象になってしまいます。
私の父も、私たち兄弟の名義で複数の口座を作っていました。「子どもたちのために貯めておいた」つもりでしたが、相続税法上は父の財産として扱われてしまいます。
この問題を解決するために、毎年の贈与に切り替えました。年間110万円以内の贈与であれば贈与税はかからないので、計画的に財産移転を進めています。
生前贈与の効果的な活用法
生前贈与は相続税対策の基本ですが、いくつか注意点があります。
まず、贈与は「あげる側」と「もらう側」の合意が必要です。通帳や印鑑を親が管理したままでは、贈与として認められません。
また、相続開始前3年以内の贈与は、相続税の対象に戻されてしまいます。そのため、早めに始めることが重要です。
私たちの場合、父から年間110万円ずつ、兄弟3人が贈与を受けることにしました。父の資産が年間330万円ずつ減ることになります。
ただし、毎年同じ金額を同じ時期に贈与していると「定期贈与」とみなされ、一括で贈与税がかかる可能性があります。そのため、金額や時期を少しずつ変えるようにしています。
不動産の相続対策は特に重要
不動産を所有している場合の相続対策は複雑です。
まず、相続税評価額の引き下げを検討します。賃貸物件にすることで、評価額を下げることができます。また、小規模宅地等の特例を利用すれば、居住用の土地の評価額を最大80%減額できます。
ただし、これらの制度には細かい要件があります。専門家に相談することをお勧めします。
私の父の場合、自宅の土地が相続税評価額で3000万円ありました。小規模宅地等の特例を適用すれば600万円まで下がるのですが、そのためには母が引き続き住み続ける必要があります。
将来的に母が施設に入ることになった場合を考えて、今から対策を検討しています。
生命保険を活用した節税対策
生命保険は相続税対策として非常に有効です。
死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。また、保険金は現金で受け取れるため、相続税の納税資金としても活用できます。
私の父は、80歳で終身保険に加入しました。健康状態の審査はありましたが、問題なく加入できました。
保険料は一括で支払い、死亡保険金が保険料を上回る設計にしました。相続税の節税効果と納税資金の確保を同時に実現できます。
専門家との連携が不可欠
相続税対策は複雑で、素人判断では間違いを犯しやすい分野です。
税理士、弁護士、司法書士、ファイナンシャルプランナーなど、複数の専門家と連携することが重要です。
私たちは、相続に詳しい税理士をメインにして、必要に応じて他の専門家にも相談しています。費用はかかりますが、間違った対策を取るリスクを考えると、十分に価値があります。
家族間の合意形成も重要
相続対策は、相続人全員の理解と協力が必要です。
一人だけが積極的でも、他の家族が反対していては、うまくいきません。定期的に家族会議を開いて、方針を共有することが大切です。
私たちの場合、年に2回、税理士も交えて家族会議を開いています。対策の進捗状況や、新しい制度の情報などを共有しています。
最初は気まずい雰囲気もありましたが、今では当たり前の行事になっています。
早めの対策が選択肢を増やす
相続税対策は、時間があるほど選択肢が増えます。
逆に、相続が発生してからでは、できることが限られてしまいます。特に、不動産の売却や組み替えなどは、相続後では時間がかかってしまいます。
50代のうちに親と相続について話し合い、必要な対策を進めておくことをお勧めします。
「まだ早い」と思うかもしれませんが、実際に始めてみると「もっと早く始めておけばよかった」と感じることの方が多いはずです。
親の元気なうちに、家族みんなで将来のことを考えてみませんか?
※本記事に記載されている個人の体験談、相続税額、具体的な対策内容等は説明目的のフィクション含みます。相続税対策に関する判断は専門家にご相談ください。