こんにちは、ライフデザインパートナーHMです。

ファイナンシャルプランナーとして15年間、1000世帯以上の家計相談に携わってきた経験から、50代の医療費準備について実体験を交えてお話しします。私自身も54歳で高血圧と診断され、その後の医療費が年間12万円増加したことで、健康なうちからの準備の重要性を身をもって実感しました。

これまでのお客様の事例では、50代で突発的な医療費により200万円以上の支出を余儀なくされたケースを数多く見てきました。「まだ健康だから大丈夫」という考えが、いかに危険な思い込みかを実際のデータと共にご紹介します。

50代から急激に増える医療費の現実

厚生労働省の統計によると、医療費は50代から急激に増え始めます。

40代の年間医療費は平均15万円程度ですが、50代は25万円、60代は40万円、70代は70万円と、年代が上がるにつれて倍々で増えていきます。

これは、生活習慣病の発症率が50代から急激に高まるためです。高血圧、糖尿病、脂質異常症など、これまでなかった病気が次々と見つかるようになります。

私の場合も、54歳で高血圧と診断され、定期的な通院と薬の服用が必要になりました。月1回の診察と薬代で、月約5000円の負担です。年間6万円の医療費増です。

さらに、55歳で人間ドックを受けた際、胃にポリープが見つかりました。内視鏡での切除手術を受け、その費用が約15万円。健康保険で3割負担でしたが、思わぬ出費でした。

健康保険の限界を知っておく

「健康保険があるから医療費は安心」と思いがちですが、実は健康保険でカバーされない費用も多くあります。

まず、差額ベッド代。個室や少人数部屋を希望すると、1日数千円から数万円の追加費用がかかります。入院期間が長くなると、かなりの負担になります。

次に、先進医療費。がんの陽子線治療や重粒子線治療など、健康保険の対象外の治療を受ける場合、数百万円の自己負担が必要になることもあります。

また、通院時の交通費や、家族の付き添いにかかる費用なども考慮する必要があります。遠方の専門病院に通う場合、年間数十万円の交通費がかかることもあります。

私の知人で、がんの治療で年間300万円の医療費がかかった方がいます。健康保険の高額療養費制度を利用しても、月8万円程度の自己負担が続きました。

高額療養費制度の活用と限界

高額療養費制度は、月の医療費が一定額を超えた場合に、超過分が払い戻される制度です。

50代の標準的な収入であれば、月の自己負担限度額は約8万円。それを超えた分は払い戻されます。

ただし、この制度にも限界があります。

まず、差額ベッド代や先進医療費は対象外です。また、複数の病院にかかった場合、病院ごとに計算されるため、合計額が高額でも制度の対象にならない場合があります。

さらに、一旦は全額を支払う必要があり、払い戻しは数ヶ月後になります。一時的にでも、まとまった現金が必要になります。

私が高血圧の治療を始めた際、薬の種類を変更するたびに検査が必要で、月の医療費が3万円を超えることがありました。高額療養費の対象にはなりませんが、家計には大きな負担でした。

医療保険の見直しポイント

50代になったら、医療保険の見直しも重要です。

若い頃に加入した医療保険では、現在の医療費水準に対して保障が不足している可能性があります。また、通院保障がない古いタイプの保険では、長期間の通院治療に対応できません。

私は50代になってから医療保険を見直し、以下の点を重視しました。

まず、入院日額よりも通院保障を重視。最近は入院期間が短くなり、通院での治療が長期化する傾向があります。

次に、先進医療特約の付加。がん治療などで先進医療を受ける可能性を考慮し、数百万円の保障を確保しました。

また、がん保険の診断給付金も増額しました。がんと診断された時点で100万円が受け取れるので、治療法の選択肢が広がります。

医療費専用の貯蓄を作る

医療保険だけでなく、医療費専用の貯蓄も作ることをお勧めします。

突発的な医療費に対応するため、常に50万円程度の現金を確保しておきます。これは他の目的には使わず、医療費専用として管理します。

また、将来の医療費に備えて、月1万円程度の積み立ても始めました。60歳までに120万円、70歳までに240万円の医療費用資金を確保する計画です。

この資金は普通預金ではなく、元本保証で多少利回りの良い商品で運用しています。個人向け国債や定期預金を使い分けています。

予防医療への投資も重要

医療費を抑える最も効果的な方法は、病気にならないことです。

50代からは、予防医療への投資も重要になります。年1回の人間ドックは必須として、必要に応じて追加検査も受けています。

私は毎年10万円程度を予防医療に使っています。人間ドック、歯科検診、眼科検診など。早期発見により治療費を抑えられれば、十分に元は取れる投資です。

また、日常的な健康管理にも力を入れています。ジムの月会費8000円、サプリメント代月5000円など、健康維持のための支出も医療費の一部と考えています。

家族の医療費も考慮する

50代は、自分だけでなく家族の医療費も考慮する必要があります。

配偶者の更年期障害、親の介護や医療費、場合によっては子どもの精神的な問題など、家族全体の医療費が増える傾向があります。

私の場合、妻が更年期障害でホルモン治療を受けており、月1万円程度の費用がかかります。また、父の通院介助で、月2回程度の付き添いが必要で、交通費や時間的コストも発生しています。

家族全体で月3万円程度の医療関連費用がかかっており、年間では36万円になります。これも家計に大きな影響を与えています。

医療費控除の活用

年間の医療費が10万円を超えた場合、医療費控除を受けることができます。

対象となるのは、治療のための費用です。健康診断や予防接種は対象外ですが、病気が見つかって治療を受けた場合の検査費用は対象になります。

通院のための交通費も控除の対象です。電車やバスの運賃、やむを得ない場合のタクシー代も含まれます。

私は毎年、医療費控除を申請しています。家族全員の医療費を合計すると、年間20万円程度になるため、所得税の還付を受けています。

50代からの医療費は、避けて通れない現実です。健康なうちから準備を始めることで、いざという時に慌てずに済みます。

医療保険の見直し、医療費専用の貯蓄、予防医療への投資。これらを組み合わせて、総合的な医療費対策を講じていきましょう。

※本記事に記載されている個人の体験談、金額、具体的な対策等は説明目的のフィクション含みます。医療費準備に関する判断は専門家にご相談ください。