50代から始める財産管理の基本──『いざという時』に家族が困らない準備

「まだ50代だから、そんなこと考えるのは早いよね?」
財産管理や相続の話になると、こんな反応をする方が多いです。
でも、私は51歳で軽い心筋梗塞を経験し、この考えが甘かったことを痛感しました。
幸い大事には至りませんでしたが、もしものことがあったら、家族は何をどうすればいいかわからない状態だったんです。通帳がどこにあるのか、保険の内容は何か、借金はあるのか。妻は何も知りませんでした。
50代から財産管理を考える理由
50代は、財産管理を真剣に考え始める最適な時期です。
まず、ある程度の資産が蓄積されていること。住宅、預貯金、株式、保険など、20代、30代の頃とは比較にならない規模の財産を持っています。
次に、病気や怪我のリスクが現実的になってくること。生活習慣病やがんなど、突然入院や手術が必要になる可能性が高まります。
さらに、親の介護や相続を経験する年代でもあります。親の財産整理を通じて、自分の財産管理の重要性を実感する方も多いでしょう。
私の場合も、父の入院をきっかけに財産管理の必要性を痛感しました。父の通帳や保険証券がどこにあるかわからず、家族みんなで探し回った経験があります。
まずは財産の「見える化」から
財産管理の第一歩は、現在の財産を正確に把握することです。
銀行口座、証券口座、保険、不動産、借金など、すべての財産と負債を一覧表にまとめます。これが意外と大変な作業です。
私の場合、整理してみると、忘れていた銀行口座が3つもありました。学生時代に作った口座、転職時に給与振込用に作った口座、住宅ローン専用の口座など。残高は少額でしたが、放置していると相続時に面倒なことになります。
また、加入している保険の内容も詳しく確認しました。若い頃に入った終身保険、住宅ローンに付帯する団体信用生命保険、会社の団体保険など、複数の保険に加入していることがわかりました。
重要なのは、これらの情報を家族と共有することです。
エンディングノートの活用
財産の整理ができたら、エンディングノートを作成することをお勧めします。
エンディングノートとは、自分に何かあった時に家族が必要な情報をまとめたノートです。法的な効力はありませんが、家族にとっては非常に有用な情報源になります。
私が記載した項目は以下の通りです。
基本情報として、本籍地、マイナンバー、年金手帳の保管場所、健康保険証の情報など。
財産関係では、銀行口座の一覧、証券口座の情報、保険の内容、不動産の詳細、借金の有無など。
デジタル関係では、パソコンやスマートフォンのパスワード、ネット銀行のログイン情報、SNSアカウントの情報など。
連絡先として、親族の連絡先、友人・知人の連絡先、職場の連絡先、かかりつけ医の情報など。
最も重要なのは、これらの情報を定期的に更新することです。私は年に2回、情報の見直しと更新を行っています。
重要書類の整理と保管
財産管理では、重要書類の整理と保管も欠かせません。
通帳、印鑑、保険証券、不動産の権利証、株券、契約書類など、重要な書類を一箇所にまとめて保管します。
私は、重要書類専用のファイルボックスを用意し、分類して保管しています。さらに、それぞれの書類がどこにあるかを示した一覧表も作成しました。
また、貸金庫を利用することも検討しました。最も重要な書類(不動産の権利証、株券など)は貸金庫に保管し、コピーを自宅に置いています。
デジタル化も進めています。重要書類をスキャンしてPDFファイルにし、パスワード付きでクラウドストレージに保存。万が一、自宅が火災や災害に遭っても、重要な情報を失わない体制を整えています。
家族との情報共有の方法
財産情報を家族と共有する際は、段階的に進めることが大切です。
まず、配偶者とは全ての情報を共有します。エンディングノートの内容、重要書類の保管場所、パスワードなど、包み隠さず話し合います。
子どもたちには、概要レベルで情報を伝えています。「どこの銀行に口座があるか」「どんな保険に入っているか」「不動産はどこにあるか」など、いざという時に必要な基本情報です。
ただし、具体的な金額や詳細な内容は、必要に応じて段階的に開示する方針にしています。
また、年1回の「家族会議」で、財産状況の変化について報告しています。新しく始めた投資、保険の見直し、ローンの完済など、重要な変更があった時は必ず共有します。
デジタル遺産の管理
最近は、デジタル遺産の管理も重要になってきています。
ネット銀行、オンライン証券、暗号資産、ポイントサービスなど、インターネット上に存在する資産が増えています。これらは、パスワードがわからないと、家族でも確認できません。
私は、デジタル資産専用のパスワード管理表を作成しています。サービス名、ログインID、パスワード、秘密の質問の答えなどを記載し、定期的に更新しています。
また、二段階認証を設定しているサービスについては、認証アプリの情報や、バックアップコードも記録しています。
さらに、各サービスの「家族への承継手続き」についても調べています。故人のアカウントを遺族が相続する際の手続き方法を事前に確認し、必要な書類も準備しています。
税理士や司法書士との連携
財産の規模が大きくなってきたら、專門家との連携も検討しましょう。
相続税の対象になる可能性がある場合は、税理士に相談することをお勧めします。生前の節税対策や、相続時の手続きについてアドバイスを受けられます。
不動産を多く持っている場合は、司法書士に相談することも有効です。相続時の名義変更手続きや、必要な書類の準備について指導を受けられます。
私は年1回、税理士と面談して、財産状況の確認と今後の対策について相談しています。費用はかかりますが、安心感には代えられません。
定期的な見直しの重要性
財産管理で最も大切なのは、定期的な見直しです。
人生は変化します。転職、引越し、家族構成の変化、健康状態の変化など、様々な要因で財産状況も変わります。
私は年2回、春と秋に財産管理の見直しを行っています。エンディングノートの更新、重要書類の整理、パスワードの変更、家族との情報共有など、まとめて実施します。
また、大きな変化があった時は、その都度見直しを行います。保険の見直し、投資方針の変更、不動産の売買など、重要な変更があった時は必ず記録を更新します。
50代からの財産管理は、家族への愛情表現でもあります。
「いざという時に家族が困らないように」という思いやりが、適切な財産管理につながります。
面倒に感じるかもしれませんが、一度整理してしまえば、その後の管理は比較的簡単です。
大切な家族のために、今から準備を始めてみませんか?