50歳を迎える前に考えたい、「定年のない働き方」という選択肢

「定年まで、あと何年か」
40代後半になると、ふとそんな計算をしてしまう瞬間が増えてきます。

年金は足りるだろうか。
再雇用になったら給料は下がるのだろうか。
このまま組織の中で続けられるのか──。

でもその問いを、もう一歩進めてみると、
この先、どんな形で“生きて働いていたいか”」という問いが、静かに浮かび上がってきます。

「定年」という言葉に潜む“終わり”のイメージ

日本では長らく、「60歳=引退」「65歳=限界」という文化が続いてきました。
ですが、実際には健康寿命も伸び、60代・70代でも現役として活躍する人が増えています。

問題は、制度や年齢そのものではなく、
自分の中にある“終わり”のイメージが働き方を縛っていることかもしれません。

「もう若くない」
「今さら新しいことなんて」
「居場所がなくなったら終わり」

こうした思い込みは、「働かされる自分」から「働きを選ぶ自分」への移行を妨げてしまいます。

定年の語源と意味

“定年”は「年齢をもって区切る」という意味を持ちますが、これは企業制度上の都合であり、個人の能力や生き方の線引きではありません。

スキルと価値観で「自分の仕事」を定義する時代へ

定年のない働き方とは、単に年齢で区切られないことではありません。
それは、「何によって自分は価値を生み出せるか」を問い直す働き方です。

  • 経験をコンテンツ化する
  • 得意を支援に変える
  • 関心を発信に置き換える
  • 手を動かす仕事から、頭を使う仕事へと移行する

たとえば:

  • コーチング/相談業/メンタリング
  • 執筆・編集・講座の開催
  • 地域活動やNPOでの役割
  • リモートワーク・フリーランス・副業複業

これらはすべて、**年齢や会社の枠を超えて、「今からでも作れる働き方」**です。

働き方の「軸」を変える──ライスワークからライフワークへ

若い頃の働き方は、生活のため、評価のため、出世のため──つまり「ライスワーク」が主軸だったかもしれません。

ですが、人生の後半は、「何をやっているときに自分が満ちるか」という、
実存的満足度=ライフワーク性が軸になる傾向があります。

これは自己実現や起業の話ではありません。
日々の働きに「意味」や「納得」があるかどうか。
それだけで、50代以降の働き方の“重さ”はまったく変わってきます。

実存的キャリアとは

自分が社会にどう貢献したいか、何に価値を感じるかをベースにしたキャリア設計。経済的要素だけでなく、感情的・倫理的充実感も重視されます。

「遅すぎる」は幻想

「あと5年しかない」ではなく、「まだ5年ある」
「50歳じゃ遅い」ではなく、「50歳からの選択肢をまだ知らないだけ」

ユングは「人生の後半こそ、自我と本質が統合されるべき時期」と述べました。
つまり、年齢を重ねたからこそ、“自分の働き方”が始められるのです。

今の会社に残るという選択も、
組織の外に出るという選択も、
どちらにも「軸」が必要です。

その軸が、「自分の価値観」と「今の自分にできること」の交差点にある限り、
それは立派な“定年のない働き方”といえるのです。

結論:「いつまで働くか」ではなく「どう働いていたいか」

50歳を目前に、「あと何年働けるか」を数えるのではなく、
「どんな働き方なら、あと何年でも続けたいか」を考える視点を持ってみてください。

“定年”という言葉に、終わりではなく「整える区切り」という意味を与えられるなら、
働くことは、年齢では終わらない。

これからの働き方は、誰かに与えられるものではなく、
自分で選び直せる時代になっているのです。